上司と上手につきあう方法【完結】
「気が、まぎれた……助かった。じゃあ、おやすみ」
硬直した私に、少しぶっきらぼうに、早口で部長はささやくと、ドアノブをグイッと押して足早に玄関を出て行く。
カツカツと響きながら遠ざかる足音。
私といえば、センスのいい、上等なスーツに包まれた背中を見送るだけで、精一杯で。
あ、やばい、行っちゃう!
「お、おやすみなさい……!」
慌てた私は、玄関から廊下に飛び出して、彼の背中に向かって叫んでいた。
部長は私の言葉を聞いて、振り返らないまま、ちょっとだけ手を挙げる。
もしかして部長、少し照れてる?
やだ、照れないでよ、私まで恥ずかしくなってくるじゃない!
思わず両手で頬を押さえていた。