片恋
1章
「琴子(コトコ)ちゃん、
俺、琴子ちゃんを
お嫁さんにする約束を
したいんだけど、いいかな?」
まるで小さな子供に
言い聞かせるみたいに、
遼平(リョウヘイ)君は
かがみこんで私の顔を
のぞきこんだ。
私はそんなに子供じゃ
ないんだけど、
いつも優しく
あまやかしてくれる
年上のお兄さんに
ついつい、
子供に戻ったフリをする。
その時も、
あまり意味がわからない
ふりをして
ぼんやりと
遼平君にみとれながら、頷いた。
「そっか。よかった。
俺、琴子ちゃんのこと、
ずっと好きだったんだよね。」
喜ぶ風でもなく、
ただニッコリと
遼平君が笑った。
完璧すぎるくらいに
整った笑顔に、
ますます呆然として
目を奪われながら、
なんとなく、
この人の言う「好き」は
私が知っているものとは
違うんだろうなと、
思った。
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