片恋

―――

――――――・・・



「え、琴子ちゃん!?」


ガチャッとドアが開いて、
室内から漏れた光が眩しくて目がくらんだ。


「・・・あの、ごめんね、遅くなってっ・・・」


部屋の中からの光が暖かく感じられて、
ぼんやりと外の寒さを思い出す。


手足の皮膚は冷たかったけれど、

走ったおかげで
切らせた息は、熱いくらいだ。


ぜいぜいと呼吸を整えながら顔を上げると、

私はなんとか笑顔を作った。


遼平君は驚いたように、
ドアを開けたままの体勢でこちらを見ている。


顔を見た途端
ほっと気持ちがほどけたけれど、


笑って迎えてくれるいつもとは違って
どこか戸惑ったような表情に、

私は心細くなって、おどおどと彼を見上げた。



「・・・今日はもう、来ないのかと思った。

電話にも出ないし・・・」


「あ、途中で携帯、
鞄ごとどっかやっちゃって・・・。」


「ええ?」


聞き返す声がなぜか空々しく聞こえ、

私はびくっと身体を震わせる。


あ、先に駅で電話すればよかったんだ・・・。


そんなことにも
思い至らなかった。



へへ、と意味もなく笑いながら
涙がにじむのを堪えきれなくなってうつむく。


部屋の光を背にして影になった遼平君が、

何か言おうとしてためらっているように感じた。


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