片恋
「ボケッと歩いてんじゃねーよ。
ひったくりに狙われるぞ。」
「・・・手ぶらなんですけど・・・。」
頭を押さえながら振り返って、
だらだらと涙を流したまま
恨みがましく亮介をにらむ。
「女の子に手をあげるなんて、
冗談でも最低だよ・・・!!」
やつあたりたい気分だ。
だけど亮介は、
私の顔を見るなり
「ぶっさいくな顔ーーっ」とゲラゲラ笑い、
いきなりちゅっと私の頬にキスをした。
「な!?」
「わ、マッズィー、しょっぺぇ」
何したの、この子!?今なにしたよ!?
ぺっと舌を出して笑う亮介を、
叩いてやろうと腕を振り上げた。
亮介は、憎たらしくそれをあっさり避けて
馬鹿にしたようにへらへら笑う。
「なんなのよ、あんたって子は!?
なんなのっ・・・」
振り下ろした手を、掴まれた。
むきになって反対の手も振り下ろしたら、
それも掴まれて、バンザイみたいな格好になる。
ぼたぼたと、止めようのない涙が
地面に落ちて、黒い跡が残った。
「無視したと思ったら・・・っ
また出てきてっ・・・
・・・怒ってたくせに、
そうやって笑ったり・・・っ
何なのよっ・・・」
泣きすぎて、こみ上げるように喉が痛い。
冷えきってた頬を流れてく涙が、
熱くてピリピリする。