片恋


無防備に泣き顔をさらすのが悔しくて

顔をそむけたけれど、


亮介は全く頓着せずに、
私の顔を面白そうに覗きこむ。


「無視ー?
俺、コトコを無視したことなんてないぞ?」

「うそつき!!」

「嘘じゃねーって」

「したもん」

「してない」


ぎゅっと手首を掴んだ手に力が入り、

一瞬、ギクッと不安がかすめる。


・・・まさか、
お酒飲んでんじゃないでしょうね!?


焦って手を外そうと顔を上げると、

目の前にあった亮介の瞳は、
とても静かに澄んでいた。



「してない。」



亮介がはっきりと、言い切る。





誰もいない交差点で、
月明かりの中、音もなく信号が変わった。


夜の空気は、冴えざえとして冷たい。



流れてくる穏やかな気配につられたように、

私の気持ちも静まっていく。



力を抜くと亮介の手が緩んで、

私はゆっくりと、手首を下ろす。



涙は完全に、ひいてしまった。

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