片恋



「亮介も、ありがとう。」

笑いかけて振り返ると、
いつのまにかブレザーのすそを掴まれていて、

見ると
亮介は気まずそうに、パッと手を離した。


「・・・なに?」

小さな子供みたいな仕草に、
さっきまでの親密さも手伝って、

私はやさしく聞きかえす。


「や、その・・・あのさ。」


ますます、落ち着きのない子供みたいに
足元に視線を泳がせながら、


亮介が言いにくそうに、口を開いた。


「今だけでも・・・俺と逃げねえ?」


「ええ?」


思わず素っ頓狂な声を出すと、

亮介は弁解するように、顔を上げて

ヒラヒラといつものように手を振った。


「や、だから・・・



・・・遼平、


怒ると結構こえーよ。」




うん、知ってる。




私も笑いながら、

顔の前でヒラヒラと手をふり返す。

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