片恋
亮介の家から
そう遠くない私の家に向かって、
いつもより少し早足で歩く、
遼平君の背中を見あげた。
それから数歩先まで小走りをして、
手を伸ばして追いついて、
やっと隣りを並んで歩く。
探り当てるように手を繋いで、
目の前にある腕にそっと顔を寄せると、
その袖は、
つんと冷たい夜の空気を、
たっぷりと吸い込んでいた。
「・・・遼平君、怒ってる?」
そーっと腕越しに、
顔を覗き込むようにして反応をうかがうけれど、
遼平君は前を向いたまま、こちらを見ない。
「どうしてそう思うの?」
静かな口調に彼の機嫌をはかりかねて、
私は、当たり障りのない言葉を探す。
「・・・ずっと黙ってるから。」
それを聞いて遼平君は軽く眉を顰めると、
呆れたように息を吐いた。
わざとつかれた溜息に
叱られるのを覚悟しながら、
私は往生際悪く、
気づかないふりでふざけて笑う。