片恋
「亮介もだけど、
子供が出歩いていい時間じゃないだろ。
それとも、人を心配させて喜ぶほど子供なの?」
言葉も口調も穏やかだけれど、
声には
誤魔化そうとする私に対する
かすかな苛立ちが込められていて、
私は笑いを顔に貼りつかせながら、
内心、冷水を浴びせられたような気持ちがして、
あせりまくっていた。
そうして謝るタイミングを見失った私は、
話をそらそうと悪あがきをする。
「そんなに心配される程、子供じゃないよ。
それとも遼平君、
私がずっと亮介といたから、
やきもちやいてたりして――・・・とか。」
言いながら自分でも恥ずかしくなって、へらっと笑う。
でも、だったら、ちょっと嬉しい。
「もしかして、キスくらいはしちゃったかもよ」
ほっぺでしたが。
冗談に聞こえるよう、
思いっきりふざけて言った。
けれどやっぱり、
遼平君の顔は見られなくて、下を向く。
目の前にある、繋いだ手をひたすら見つめた。
とても冷たい手。
そうして、
にわかに不安になって
びくびくしながら待った彼の言葉は、
思いもよらないものだった。
「そうなの?だったら、いいかな」