片恋

【記憶 一】



【記憶 一】

ずっとさびしかったおばけは
よろこんでおさかなと
おしゃべりをしました。

・・・

遼平・十六歳

琴子・十二歳 


ふっと、

風が吹いたような気がして
うっすらと遼平が目を開けると、

間近に琴子の顔があった。


「ひゃっ・・・、りょ、遼平君
もしかして起きてた!?」

真っ赤な顔をした琴子が、慌てて飛びのく。


「いやごめん、眠ってた。」

遼平はそんな琴子の様子を
気に止めることなく、

軽く眉を顰めて手のひらで目をこすると、

体を起こして椅子に座り直した。


それから机の上のノートに手を伸ばして
ざっと目を通す。

琴子の勉強を見るようになってから、
遼平にとってその時間は、
数少ない休息のひと時となっていた。

毎週金曜日の夕方になると、
小学校から帰った琴子が、遼平の家にやってくる。

高校一年の間だけ、
という約束の「体験アルバイト」も、
小学校の卒業式を控え、終わりを迎える。

おしゃべりに熱心なこの生徒は
話し相手にさえなってやれば、

問題が解けなくても満足するらしい。

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