片恋
【遼平 1】
ピンポーン、と
真っ暗な家に
チャイムが響き渡る。
何の反応もないので、
鍵を使ってドアを開けた。
中に入り電気をつけると、
息をひそめた弟が
玄関に座りこんでいた。
「・・・びっくりしたあ。」
こっちこそ、驚いた。
「いたのか、周平。」
「おかえり、遼平くん。」
りょうへいくん?と
聞きとがめると、
慌てて弟が言い直す。
「ことこちゃんのが、
うつっちゃった。」
「琴子ちゃん?
最近、話したのか?」
毎日来てるよ、と
なんでもないように弟は言い
立ち上がってリビングに向かう。
歩きながら、一個一個
電気をつけてまわる。
意外な事を、聞いた。
と思ったそばから、それを打ち消す。
たぶん、亮介に会いに来てるのだ。