片恋
土曜日に、遼平君と映画を見る約束をしていた。
ここ数日、
あれから連絡を取り合っていなかったけれど、
遼平君なら
きっと待ってる、そう確信しながら
このまま向かっていいのだろうかと、
不安と迷いで何度も立ち止まりかける。
電車を降りて人の流れについて歩いていると、
突然、肩を叩かれた。
「ちょっと、あのさ。21番線ってどこ?」
「にっ・・・?」
振り返ってマヌケな顔で見返すと、
知らない男の人は、
私の反応に焦れるように更に問いかける。
「あーいいや、君はどこに向かうの?」
「いえ、私は待ち合わせで・・・」
「んじゃ、どっからきたの?何線?」
言われて自分が降りてきたホームを見やるけれど、
その質問の意図が、よくつかめない。
「あの、21番線ですか?あそこの駅員さんに・・・」
指をさすと、その手を握られてぎょっとする。
生暖かい感触に、ぞくっと肌が粟立った。
「さっき邪魔にされてさ。」
「あ、あの、じゃあ、私が聞いてきますっ」
半ば振り切るようにして改札へ向かい、
窓口でホームを尋ねながら
おそるおそる振り返ると、
その人はもういなくなっていた。
ほっとして改札を離れながら、
何となく手をポケットに突っ込んだ。
それからハッとして時計を探す。
「うわ、過ぎてる・・・!」
遼平君は、来てるだろうか。
待ち合わせ場所に向かって走りながら、
あんまり時間に遅れたら
帰ってしまったのか、
それともはじめから来てなかったのか、
どちらかわからなくなるなと思った。