片恋
我ながらナイスアイディア!とほっと息をつくと、
にっこり笑って、
遼平君を見つめ返した。
「うん。水族館、すき。」
「知ってる。」
そう言って引き返して歩き出した遼平君の返事は、
どこか素っ気なく聞こえ、
私はうろたえて、問いかけるように彼を見上げる。
遼平君はその視線に一瞥をくれると、
前を見たまま口を開いた。
「水族館に行くんだったら、
駅に戻って電車に乗らないと。」
「あっ、そっか、ごめんなさい・・・」
小さく謝ってうつむいたけれど、
それに対する返事はなかった。
・・・どうしよ、気分を悪くさせちゃったかな・・・
溜息を吐かれたわけじゃない。
舌打ちされたわけでもない。
ただ、笑ってくれなかっただけだ。
だけど、
次の約束をしないと
これっきりになりそうで怖かった。
・・・なんでだろう?
近付きすぎるのも怖くて、
離れるのも怖くて、
・・・私は、何に怯えているのだろう。
気がつくと、足が止まっていた。
慌てて、人ごみから遼平君の後姿を目で探す。
少し離れた所で、遼平君が立ち止まって振り向いた。
そのまま、私が来るのを待っている。
私は急いで、遼平君の所へと駆け寄った。