片恋
「あの、あの!
もう、はぐれたくないんだけど、
その、手を・・・つないでもらっていい?」
しどろもどろになりながら、何とか最後まで言い切った。
それだけでのどが渇いて、顔が熱い。
心臓がバクバクいう。
数秒にも満たないのに、彼の反応が怖くて待てない。
だけど遼平君は、素っ気ないくらいにあっさりと、
「え?・・・ああ、そう。」私の手を取った。
そうして私をのぞきこんで、ニッコリ笑う。
「―――これでいい?」
暗がりでもはっきりとわかる
とても見慣れた、隙のない笑顔。
「―――・・・うん、ありがとう。」
かろうじて答えた後で
我に返ってはしゃぎながら、
わざとらしさを見抜かれそうで、
目を合わせないよう前を向く。
「や~、手のかかる子でごめんね。」
「はは。何をいまさら。」
不安が緊張を伴いながら急速に形を持って、
ヒヤリと冷たく、しこりとして残る。
・・・些細な言葉にひっかかりを覚えるのは、
私が過敏になってるせいだろうか。
それとも、それは気のせいじゃなくて・・・