片恋

「・・・そうだ、おみやげが欲しいっ」

出口に向かって歩きながら、
思いついて遼平君の手を引っ張った。

だけど付き合わせるのもどうかと思い直して、
遼平君の手を離して、
土産物のコーナーを振り返る。

「あ、えっと、ちょっと行って買ってきちゃうね!
あの・・・ここにいてくれる?」

「それでもいいけど、一緒に行こうか?」

そう言ってもらえただけで
すっかり気持ちが軽くなった私は、

ありがとう、でもすぐだからちょっと待ってて!と答えて、

人の流れに逆らって売店へと向かう。



混雑の割にはスムーズに買い物を済ませることができて、
急いで売り場から引き返すと、

壁に寄りかかる遼平君の前に、立ち止まった女の人が見えた。

「・・・だれ、だろ。」

遼平君が一言二言いい、
女の人はそれに快活に笑って答えると、

肩にかけたバッグをしまい直して、去っていく。


その後姿を眺めて突っ立っていると、
遼平君が私に気づいてこちらを向いた。

私は慌てて、彼に駆け寄る。

< 127 / 185 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop