片恋
【記憶 二】
【記憶 二】
そうしておばけは
ノイズばかりに
みみをかたむけていきました。
遼平・十二歳
琴子・八歳
遼平が絵を、描いている。
学校の宿題で、面白くもなさそうに、
そのくせ迷いなく丁寧に。
床に直接、画用紙を置いて、
無造作に転がった絵の具は、
それでいて彼なりの順番で並んでいる。
この部屋には、誰も来ない。
時々、亮介や周平が廊下を通りかかると、
琴子が顔を出して、
「遼平君の邪魔しちゃだめだよ。」と追い返す。
遼平としては琴子にも出て行ってほしいが、
真剣だと思われるのもどこか癪で言い出さない。
そうしておばけは
ノイズばかりに
みみをかたむけていきました。
遼平・十二歳
琴子・八歳
遼平が絵を、描いている。
学校の宿題で、面白くもなさそうに、
そのくせ迷いなく丁寧に。
床に直接、画用紙を置いて、
無造作に転がった絵の具は、
それでいて彼なりの順番で並んでいる。
この部屋には、誰も来ない。
時々、亮介や周平が廊下を通りかかると、
琴子が顔を出して、
「遼平君の邪魔しちゃだめだよ。」と追い返す。
遼平としては琴子にも出て行ってほしいが、
真剣だと思われるのもどこか癪で言い出さない。