片恋
耳慣れたものより少し控えめな、
チャイムの音が聞こえた。
いつものように
遼平君にもらったアルバムを聴きながら歩いていたら、
いつの間にか彼の通う大学まで来ていた。
自分の無意識におののきながら、
正門近くにある植え込みに腰掛ける。
それからイヤホンを外して鞄にしまうと、
その鞄を足元に置いた。
――わかってる。
これだけ広くて人が多いんだから会えるわけがない。
偶然なんて、起こらない。
運命なんてないのだと、
きっと私はそれを確かめて安堵する。
ぼんやりと、帰っていく学生を眺めた。
暗さを増すほどに冷え込んできて、
私はコートのポケットに手を入れたまま、
なるべく小さく縮こまった。
寒さでじっとしていられず、
ポケットの中で飴の包みをもてあそぶ。
「私がここにいたら、遼平君、怒るかな?」
メールの返信は、まだない。
電話は、怖くて掛けられない。
じわっと視界が急ににじんで、
慌てて地面をにらんだ。
涙をこぼさないように、まばたきをこらえていたら、
ますます惨めな気持ちになった。
――運命なんかあるわけない。
偶然をあてにするなんてどうかしてる。
こんなところにいる自分は、馬鹿だと思った。
それでも私は、遼平君なら私を見つけ出してくれるのだと、
根拠のない何かに期待をして待っている。
期待しながら信じられずに、
ただ怯えて逃げている。