片恋

「琴子ちゃんは、何か欲しいものがあるの?」

「んーー、遼平君の欲しい物を聞いたら言う。」

頑張って食い下がると、
遼平君は困ったように微笑んだ。


「俺は、いいよ。」

「だめーー!何でも言って!
物じゃなくてもいいよ!
して欲しいこととか!

お小遣いで足りなかったら、
アルバイトするくらいの気合はあります!」

立ち上がって身を乗り出すと、
「いや、ほんとに。」と、少し強い口調で返された。

「欲しい物はないんだ」

「じゃあ、」

「俺は琴子ちゃんに何かして欲しいとは思わないし、
特に期待したこともない。

最初に言ったと思うけど、
俺の為にっていうなら、ほんとにいいから。」


「それって・・・」

――初めからずっと、期待されてない。



怒られたわけでもないのに、

さっきの数百倍こたえた。


「あ、じゃあ・・・、えっと、」

適当に会話を続けようと思うのに、
何を言っていいのか、もうわからない。

「・・・ごめんなさい、ちょっと席はずすね。」

立ち上がったついでに、その場から逃げだした。


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