片恋
「・・・あと、これはやめたほうがいいよ、ことこちゃんは。」
並んで歩きだしながら、そう言ってシュウ君は、
ぶんぶんと手に持ったイヤホンを振り回す。
「ああ、夜道では危ないって言うもんね。」
「うん。だっておれのこと、
ずーっと気づかなかったでしょ。」
「ええ!?ほんと!?ごめんねっっ」
慌ててシュウ君に謝ると、
シュウ君は拗ねて口を尖らせる。
「いいよ、謝るほどじゃないし。
それに・・・おれだけじゃないよ、ことこちゃん。」
「・・・え?」
さっきまでの年相応のふくれっつらを消して、
静かな、大人びた瞳で私を見つめる。
「ことこちゃんの周りには、
ほんとはたくさんの人がいるってこと。
ことこちゃんは、忘れてるけどね。」
「忘れてないヨーー!!」
勢いよく否定したのに、
シュウ君は「はいはい」と流して、
最後まで取り合ってくれなかった。
・・・うぅ、負けてる・・・