片恋
9章
ピンポーンとチャイムの音が小さく反芻する。
子供の頃から何百回と押し慣れたインターフォンの前で、
びくびくと緊張しながら応答を待っていると、
突然、玄関のドアが開いて
私は飛び上がりそうに驚いた。
「なんだ、コトコか。」
「・・・亮介。」
思わずほっと息をついてしまい、
そのことでかえって気分が沈む。
「シュウに何か用、なわけ、ないよな。」
亮介は家の中を一度振り返ってから、
私を見直してニッと笑う。
「うん。遼平君、いる?」
できる限り自然に返すと、
亮介はそれには答えずに、
玄関を降りてきて
ふーん、と芝居がかった仕草で
私の頭のてっぺんからつま先まで視線を走らせた。
「今日いいじゃんそれ、・・・その、・・・ぼんぼり。」
「ぼんぼり!?」
【雪洞(ぼんぼり)】
1 紙張りのおおいのある小さい行灯(あんどん)または手燭(てしょく)
『引用 三省堂大辞林』
「・・・びっくりしたー。
なにを言いだすのかしら、この子は。
で、え、ぼんぼり?
ぼんぼりをどうするの?かつぐの?」
「うるせえよ!ちょっとした勘違いだろ!!」
「ていうか、途中で照れるなら無理に褒めなくていいよ・・・。」
「照れてねえよ!!」
「じゃあ、まじぼけ?」
「それも違う!!」
「違うの!?」
亮介と話すのが、
なぜか懐かしく感じた。