片恋
「わかってたよ、琴子が欲しいのは見返りを要求されないスキンシップで、
だけど俺は、親でも兄弟でもない」
何でもないことのように
淡々と話す遼平君とは対照的に、
私はこの場に立っているだけで精一杯で、
考えることさえ、ままならない。
「じゃあ・・・、じゃあ、ともだちなら・・・?」
思いついたままを口にして遼平君を見上げると、
そうだね、と軽く相槌を打って、
「けど、俺は琴子のことが好きなんだ」
いま、なんて
「しばらく、会わない方がいいと思う。」
待って、いま、
なんて、
「なんでぇ・・・っ」
ぼたぼたと涙が落ちて、
子供のように泣くことしかできなかった。
そんな私を、遼平君は優しく見つめる。
「琴子は自分のせいだって言ったけど、そうじゃないんだ。
俺が、琴子を追い詰めたんだ。
子供の頃の琴子はめったに泣なかったし、
自分で決めたことは、曲げたりしない強い子だった。」
「もう泣かない!もう絶対泣いたりしないから・・・っ」
しゃくりあげながら涙をぬぐうと、遼平君が少し笑った。
「ごめん、俺はもう、離れたい。」
「―――・・・」
それは、私が初めて聞いた
遼平君の気持ちだった。