片恋
「あ。ことこちゃん、起きた?」
廊下を通りかかったシュウ君が、
気が付いて部屋の前で立ち止まる。
客間のソファを借りて横になっているうちに、
うつらうつらとしてしまった。
「だいじょうぶ?遼平くんは、具合悪いから寝かせとけって言ってたけど。」
シュウ君が、遠慮がちに顔をのぞき込んでくる。
「うん、ただの車酔いだから。」
メールをしなきゃ、と起き上がる。
今日の約束をどうするか、
私がメールすることになっていた。
遼平君はどちらでも「構わない。」
「・・・置いてかれちゃったなあ。」
じわっと涙がにじんで、
立てた膝に目頭を押し付けた。
泣くな、と何度も心の中で言い聞かせる。
ずっと傷つけていたのは、私の方だった。
奥歯を噛み締めて涙をこらえていると、
シュウ君が「よしよし」と私の頭を撫でた。
それから「そうだ、ことこちゃんに見せたいものがあったんだ」と、
何か思いついて、ぱたぱたと部屋を出ていく。
一人になると、
顔を上げて携帯を取り出した。
もう会ってもらえなくなるのかもしれない。
だけど、今のまま会ってもどうにもできない。
結局、今日は行かないと返した。
それから、言われたことをよく考えてみるから、
いつか答えが出たら聞いてほしい、とも。