片恋
再びぱたぱたと軽い足音がして、
シュウ君が何かを抱えて戻ってきた。
「この前、校長室の前の壁にずっとあった
古い作品をはずしてたから、持って帰ってきたんだ。
遼平くんの絵。」
ばさっと、私の前に置くとその中の一枚を手に取る。
「これ、結構やばくない?」
シュウ君の口調には面白がる響きがあって、
「やばい」の意味を測りかねたけれど、
渡された絵を見て息をのんだ。
「・・・すごい」
ひとことで言えば、暗い絵だった。
それは、童話に出てくるお城の中に見えた。
人物は一人もいなくて、
ただ緻密に、豪奢な宮殿の内部を描いている。
様々な色が混じり合って濁り、
逆に色彩と呼べるものがなくなって、
無機質でそっけなく、閉じられた印象に、
見ている側は寂しさと不安をかきたてられる。
「おれもこの前やったけど、物語の場面をかけってやつ。
はだかの王様だって。」
「・・・これ、手を抜いたって・・・」
「遼平にいちゃんがそう言ってたの?
ふーん、だから地がでてるんだ。」
何気ないシュウ君の言葉に、ハッとさせられる。
「おれ、この話ってめっちゃくちゃ可哀相だと思うんだよね。
だって普通、透明な服なんて信じないじゃん。
王様、誰か止めてって絶対思ってるよ。
なのに誰も言ってくれないの。
おれなら、こんな役やだね。死んでもやだ。」
「うーん、シュウ君はどちらかというと、
このお話に出てくる町の子供だよね。」
「それはことこちゃん。」
「えー、わたしーー?」