片恋

思いがけないことを言われて笑い返すと、
シュウ君は、本気だか冗談だかわからない調子で続けた。

「気をつけた方がいいよ、ことこちゃん。

この王様は、ほんとのことを言った子供にほうびを与えるけどさ。
王様によっては、恥をかかせたって言って処刑しちゃうかもしれないよ。」

しれっと怖いことを言うシュウ君は、
やっぱりイメージ通りだと思う。


「そうそう、あとこれ。」
シュウ君が古びた落書き帳を差し出す。

「こっちはうちの物置から出てきたんだけど、
これ、ことこちゃんの描いた絵?」

「・・・ああ、うん。そうだね。」

ぺらぺらと画用紙をめくると、
何枚かに渡っておばけとおさかなの、下手なお話が描かれている。

青いおさかなは私。

赤いおさかなはお母さん。


ずっとさびしかったおばけは、
おこってあかいおさかなをたべました。

「・・・なんかブラックだよね。

ほんとにこれ、ことこちゃんが描いたの?」

「ははは。小さいとき、うちがごたごたしてたから、
この家によく預けられてて・・・、
子供ながらに参ってたのかな。」

「そうなの?」

「車に住んでたこともあるよ」

「うそ!?キャンプみたい」

「ふふ、すぐ飽きて辛くなるって。

・・・でも、そうだね、最初は楽しかったのにな」



< 161 / 185 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop