片恋
思いがけないことを言われて笑い返すと、
シュウ君は、本気だか冗談だかわからない調子で続けた。
「気をつけた方がいいよ、ことこちゃん。
この王様は、ほんとのことを言った子供にほうびを与えるけどさ。
王様によっては、恥をかかせたって言って処刑しちゃうかもしれないよ。」
しれっと怖いことを言うシュウ君は、
やっぱりイメージ通りだと思う。
「そうそう、あとこれ。」
シュウ君が古びた落書き帳を差し出す。
「こっちはうちの物置から出てきたんだけど、
これ、ことこちゃんの描いた絵?」
「・・・ああ、うん。そうだね。」
ぺらぺらと画用紙をめくると、
何枚かに渡っておばけとおさかなの、下手なお話が描かれている。
青いおさかなは私。
赤いおさかなはお母さん。
ずっとさびしかったおばけは、
おこってあかいおさかなをたべました。
「・・・なんかブラックだよね。
ほんとにこれ、ことこちゃんが描いたの?」
「ははは。小さいとき、うちがごたごたしてたから、
この家によく預けられてて・・・、
子供ながらに参ってたのかな。」
「そうなの?」
「車に住んでたこともあるよ」
「うそ!?キャンプみたい」
「ふふ、すぐ飽きて辛くなるって。
・・・でも、そうだね、最初は楽しかったのにな」