片恋

「・・・おい、コトコ!」

呼ばれて、ぼんやりと顔を上げた。
亮介に正面から視線をぶつけられて、一気に焦点が合う。

「何のまれてんだよ、しっかりしろ!」

「そ、・・・そうだよね、大丈夫、うん」

呆然としたまま何とか笑うと、
亮介が小さく舌打ちするのが聞こえた。

「あいつ遼平の知り合いだろ?
遼平に言って、何とかしてもらえ…」

「遼平君には言わないで!」

必死すぎる制止に、亮介が驚く。

「・・・何言ってんだ、お前。」


「あっ・・・、ごめん、うん。
今度会った時に、ちゃんと言…」

「お前、いつから遼平と会ってないんだよ」

静かな口調に思わず亮介の顔を見ると、
亮介は私から目をそらして続けた。

「車が戻ってこない。」

「えっ」

「別に誰も使ってないからいいんだけど。
あいつ、なんか忙しいのか?」

言いながら、さりげなくこちらの様子をうかがう。

「えーと、その・・・しばらく会えないって・・・」

「理由は?」

「・・・それは・・・」

何も言えずに口ごもると、
「はあーーーっ」と亮介が急に大声を上げた。

「お前なあっ、遼平の言いなりになってっと、
遼平は離れてくいっぽうだぞ!

あいつに近づきたきゃ、とにかく逆らえ!

ほら、行くぞ!」

「えっ、どこに!?」


「俺が知るか!探すんだよ!」

< 166 / 185 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop