片恋
「なあー、他に遼平のいそうな所、知らねえのかよ。」
「うん・・・。」
大学構内のベンチに腰掛けて、ぼんやりと学生を目で追う。
土曜日は講義が少ないのか、学生もまばらだ。
「じゃあ遼平の知り合いとか・・・」
私が首を振るのを見て、亮介は
はあーと、うなだれてから「メールは?」と、顔を上げる。
さっき亮介の目の前で、遼平君に電話をかけさせられた。
内心、繋がったらどうしようかと思ったけれど、
繋がらないとわかるや、ほっとする間もなくメールを送らされた。
亮介がすればいいのに、と文句を言うと、
アドレスも番号も知らない、知っても一生やんないと言い張るのだ。
「来てない。」
「他はー?よく行った場所とか。」
二人で出かけた場所は、
たいてい私のリクエストだ。
「あとは、遼平君のマンションくらいしか・・・」
「・・・しょうがねえ、行くか。
手がかりくらいあるかもしれないしな。」
・・・
いつの間にか、世間はクリスマス一色だった。
どこまでも行っても途切れることなく、
クリスマスソングが聞こえてくる。
こんなことなら、遼平君へのプレゼントとして
どうせ渡せないだろうと思いながら買った手袋を、
持ってきたかったなあとかぼんやりしていると、
私の前を黙々と歩いていた亮介が、
曲がり角に差し掛かって、足を止めて振り向いた。
「なあ、遼平は何て言ったんだ?」
唐突に、
ストレートに切り出されて、仕方なく口を開く。
「・・・おおざっぱに言うと、
遼平君の気持ちと私の気持ちが、違う・・・って」
「・・・ふーん。」
私がまっすぐ進むのを見て、
亮介はまた私の前を歩き出す。
「それと・・・、どうしてか亮介のことを、すごく、気にしていて」
「はあ?俺を?気にする・・・って、・・・」
怪訝そうに繰り返した後、
「はぁーーー!?」
もう一度 振り返った亮介は、
信じられないという顔で叫んだ。