片恋
「なんだこれ。とっくに引き払ってんじゃねえの?・・・って、わけでもないのか。」
あまりにも殺風景な遼平君の部屋に、亮介が呆れる。
確かに何もないのだけれど、
住んでなければ置いてないはずの生活用品がちゃんとある。
「もとからこんなだよ。」
「はー・・・、完っ全に『踏み込まれてもいい部屋』って感じだな。
『見せてもいい部屋』じゃなくて、『どうでもいい部屋。』」
言われて初めて、殺風景な理由を思った。
部屋のこと以上に遼平君を言い当てているようで、
その言葉の投げやりな響きに、不安がよぎる。
「でも前に、他人は入れたくないって友達に向かって・・・」
「そりゃ、友達じゃねえんだろ」
考えるまでもないといった亮介の口ぶりに、
今なら、何となく納得してしまう。
「これじゃあ手がかりなんて、あるわけねえな・・・」
そう呟いたくせに、亮介はズカズカ上がり込むと
部屋の中をくまなく見て回る。
「へー、ほー、ふーん・・・」
「やっぱり帰ろうよ。何見てるの?」
私は今更ながら、
空疎なこの部屋の空気に気が引けて、
玄関の上がり框から踏みだせない。
「いやぁ、俺だったらここにライト置いて・・・」
「何しに来たの、キミ。」
窓を開けて外の景色を眺め始めた亮介に、
しばらく動きそうにないと諦めて、靴を脱いで部屋に入った。