片恋

「ねえ、さっき話してた続きだけど・・・」

窓から身を乗り出して
柵の上で腕をぶらぶらさせている亮介の近くに座り込む。

「ん?なんだっけ。忘れた。」

きょとんとした顔で振り返られて、
思わずため息が出た。

亮介が柵に腕を預けたまま、
室内を向いて窓枠に腰掛ける。

「だいたいさー、悩むことねえじゃん。
遼平がどう思ってようと、
婚約したんだからあいつはコトコのもんだろ」

こらこら。

「だってあれは・・・、形式的なものだし・・・。

遼平君なりの親切というか・・・」

「あー・・・お前、売り飛ばされそうだったんだっけ。」


そういう意味では
遼平君は本当に、自分のことに無頓着だ。


「だからなのかな・・・。

私と婚約したのは、
私と亮介が一緒にいられるように、っていうのは。」


うっかり口にしてから、

しまったと思った。


「なにそれ、意味わかんねえ。
それでなんで自分が婚約すんだよ ・・・」


窓辺に揺れていた亮介の手が止まった。

いつの間にか西日が落ちて、夕闇が迫る。

入り込んだ外気で、
部屋の中が震えそうに寒い。

不自然な間が、
緊張をはらんで、はりつめていく。



「あーー・・・、はいはい、そういう事か。」



冷え切った瞳が、私をとらえた。


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