片恋
「琴子ちゃん?ごめん、待たせた?」
ぼーっと
しすぎていたようで、
視界の中でこっちに向かってくる人が、
遼平君だとわからなかった。
気がついたら、顔をのぞきこまれている。
「わ、遼平君!ごめん、ボーっとして。」
慌てて意味もなく顔をこすると、
遼平君がくすくすと笑う。
「変わらないなあ、琴子ちゃん。
なんだか、久しぶりだね。どこ行こうか?」
――どこ行こうか?
という響きに、感動した。
これは、デートの常套句ではないですか。
ああ、そういえば
「待たせた?」もそうなのに、
ぼけっとしてて聞き流してしまった。
なんて惜しいことを・・・!!