片恋
それから少し歩いて、
連れてこられた静かなお店で
混雑を避けて
遅めのお昼をとる。
シックなお店の料理は
さすがにどれも美味しいけれど、
ヘマをやらかすんじゃないかと緊張して、
なんだか疲れてぼんやりしてしまう。
街中をブラブラ並んで歩いて
お店をのぞいて
カフェでお茶して
レストランでランチ。
――すごい。ちゃんとした、デートだ。
高校生からしたら、少し背伸びをした
お洒落なデート。
多分、大学生の遼平君からしたら、
なんてことない「いつもの」デート。
思わず、手が止まる。
食事時でよかった。
黙り込んでても、不自然じゃない。
「亮介と、喧嘩でもした?」
目の前のお皿を眺めて
ぼーっとしていたら、
不意に遼平君が、口を開いた。
はっとして顔を上げた・・・ものの、
意味がわからなくて、ぽかんと見つめ返す。
「へ?亮介?・・・特に思い当たらない
・・・というか、心当たりはありすぎるけど」
なんかあったっけ?と、
必死に思い出そうとしていると、
遼平君がおかしそうに笑った。
「なんだ、たいした事じゃないならいいんだ。
でも、何かあったらいつでも相談に乗るから。」
「???」
「喧嘩するほど仲がいい、だね。
亮介と琴子ちゃんは。
亮介の事、よろしくね。」
「―――。」
頭の中が、真っ白になった。