片恋
どこをどうして私と亮介が、とか。
なんでそんなことに、とか。
じゃあ、私との婚約は、
なんだったのか、とか。
誤解を解く気力も、
問いかける元気もなくして、
だけど気づかれないように
考えないように
それまでと同じに、夢中でしゃべった。
遼平君は変わらずニコニコと
上手に話を聞いてくれて、
私は苦労せずに、
明るい調子で
尽きることなく
おしゃべりできる。
だけどさっきと違って、足が重い。
靴の裏にアスファルトの硬さを感じる。
だから、わかった。
しゃべりながら、
そっと遼平君の横顔を見る。
すぐに、こちらを向いてにこっと笑う。
―――完璧だ。
ソツがない、
隙がない、
慣れている。
「隣にいる女の子」をいつも一番に、
気づかっている。
・・・ようにしか、見えない。
でも、知っている。
遼平君にとって、
そんな瑣末な諸々の作業は、
息をするより簡単なこと。
場を和ませたり、話を弾ませたり、
人の気を引くのも、
逸らすのも、
この人にとっては、造作もないこと。
だからきっと、誰も気づかない。