片恋
ニコニコしながら
相槌を打ちながら
こっちを向いておしゃべりしてても、
心ここにあらず、だ。
比喩よりももっとシンプルに。
「ここ」に、遼平君は
いない。
・・・そんなのただの気のせいで、
私といてもつまんないだけかも、
しれないけど、さ。
もう一度、前を向いた遼平君を
見上げる。
変わらずにこにこと、
話を聞いてくれている、けど。
・・・自覚して、ないのかな?
歌っている。
とてもちいさく。
ほんのかすかに。
多分、隣にいるのが私じゃなかったら、
誰か女の人だったら、
遼平君はもう少しだけ、気をつける。
「・・・で、それでね、えっと、」
隣にいるのが私だから、
ただの親戚の女の子だから、
きっとほんの少し、気を抜いた。