片恋
【遼平 2】
出掛けに着信があって、
見ると大学の友人だった。
『よー、遼平。今からそっち行っていい?』
出た途端、
騒々しい声が耳に飛び込んでくる。
「ああ、好きに使っていいよ。
俺、用があるからもう出るけど。」
『え~、いいの?悪いなあ。
あ、鍵はポスト?んじゃ遠慮なく~』
いちいち取り繕って見せるのが、めんどくさい。
特にそれ以上返事をせずに通話を切って、
鞄を拾い上げる。
使っていない灰皿から
無造作に鍵を取り出すと
銀の縁に触れて、
カチリとかすかな音をたてた。
琴子が選んだ、何のデザインだか
よくわからないキーホルダー。
水族館で、買ったものだ。