片恋
3章
「・・・それはタカリだ、コトコ。」
鍵のかかった屋上のドアを背にして
しゃがみこんだ亮介が、
真顔でそんなことを言った。
「ひどーっっ、
そ、そんなんじゃないもん!!」
必死に否定したものの、
自分でも思うところはあって、
他に返す言葉が思いつかない。
「嘘だよ。どーせあいつ、
時間も金も持て余してんだろ。
有意義にタカってやれ。」
「だから、ちがーう!!」
屋上に続く階段の手すりに体を預けたまま
思いっきり叫んだら、反響した。
放課後の校舎は
すでに人があまり残ってないのか、
私の声は、とてもよく響いた。
その残響と同じくらいに小さく、
亮介が呟く。
「・・・シュウが、
『ことこちゃん
最近、来ないね』って言ってた。」
「あ・・・。」
あの広い家で、
ひとりでみんなの帰りを待つ
シュウ君の姿が思い浮かんだ。
最近、亮介の家には行っていない。
遼平君と出かけることが増えて、
メールや電話でやりとりすることが多くなり、
自分の中でその必要がなくなってしまった。
物凄く勝手だとは、思うけど。
「・・・シュウ君、元気?」
「『おれもほんとは色々忙しいから、
ことこちゃんが来なくてやっと出かけられる』
ってさ。」
「どうもご迷惑をおかけしてました・・・!」
どっちが子供だかわかんねえなあと、
亮介が笑う。
「遼平君も、私のことおもいっっきり、
子ども扱いするんだよね・・・」
あれはほとんど、10歳以下の子に対する
接し方じゃないかと思う。。
遼平君の優しすぎるくらい
優しい口調や笑顔は、
シュウ君と亮介のやりとりを
思い出させた。