片恋
「はーーーっ」
緊張のあまり
チャイムを押すことすらできずに、
ドアの前ですでに数十分。
~~~やっぱ、やめとこうかなあ。
「寄ってもいい?」ってメール、
返事が来る前に、
着いちゃったんだけど。
留守電にも残したけれど
出てくれる気配はない。
・・・悪くなるような物を
手土産にしなくて良かった。
持ってきた紅茶の缶を、持ち直す。
遼平君のお部屋の前。
セキュリティ万全の超高層マンション!!
とかじゃなくて、
普通の学生さん向けの
ごくごく平均的なマンションだ。(多分)
最初は意外な気がしたけれど、
遼平君らしいといえばらしいのかな、と思う。
・・・ていうか、いるのかな、今。
じーっと閉じたドアの隙間をにらむ。
にらむ。
ひらいて。
ひらけ。
ガチャッといきなりドアが開いて、
・・・ゴッ。
私の額にヒットした。
「わっ、ごめん。人がいたんだ・・・。」
「・・・・・っ」
い、いたい~~~。
一瞬、ぶつかる!とヒヤッとした心臓が、
まだドキドキいっている。
・・・結局ぶつかったんだけど。
顔を上げると、知らないお兄さんが
ドアに寄りかかって立っていた。
「ごめんね、大丈夫?
・・・うわ、きみ、綺麗な子だねー。
あ、遼平の妹?」
妹。
・・・無理もないか、どう見ても高校生だし。
「遼平君のイトコです。」
「へー、遼平くん・だって、可愛いなあ。
遼平、今ちょっと下に行ってるけど待つ?」
「え・・・」
確か下の階に、コンビニが入っていた。
だったら、コンビニの方に行ってみようか。
すぐ戻るよ、という言葉に
曖昧にうなずきながら、迷う。
ちゃんと遼平君に断って、お邪魔したい。
勝手に踏み込んだら、
遼平君は不快に思うんじゃないだろうか。