片恋
「実はさー、さっき床に缶ぶちまけて
ペーパー使い切っちゃったんだけど、
足んないし。
しょうがないから
下に買いに行こうかと思ってたんだよね。」
「ああ、それなら・・・」
ティッシュなら、買い置きを見かけた。
「そこの棚の上に。」
私が指をさすと、その人は部屋に引き返す。
といっても、1Kだ。玄関から見渡せる。
「どこ?」
「その・・・それです、あ、そっちじゃなくて」
遼平君の部屋は、
ちょっとびっくりするくらい物がない。
必要最小限の物しかなくて、
それもきっちり仕舞い込まれて、
どこに何があるのか、かえってわからない。
・・・とはいえ、目に見えてるのに
違う所ばかり探す姿がもどかしくなり、
「お邪魔します」と小声で言ってから、
荷物を置いて、私もあがりこんだ。
「あの~、これです、この上。」
手を伸ばすと、
届く前にその人が
後ろからひょいと箱をとりあげる。
「おおーありがとう~、たすかったーっ」
へへへ、とこっちを向いて笑う顔は、
明るくて、ひと懐っこい。
「遼平君のお友達ですか?同い年?」
つられて笑いかけると、
なんとなくそのまま
その場で話すような流れになる。
私の背後に立っている人と、
首を振り向けての会話、という
不自然な体勢なのだけど。
「んーん、俺のが3つくらい上。」
「え!そんなに!?」
「あ、ヒドイ、なんか今傷ついた。」
「え、すいません、や、若いですねっ」
若いですねって!と、その人が笑い出す。
その時。