片恋



「帰れよ」

たった一言が
部屋の空気を鋭く切り込む。


「え、や、まだ時間あるから~とか。」

へへへ、と
お友達はさっきと同じ笑顔で

ただごとでない雰囲気を
やわらげようとするけれど、

遼平君は少しも揺るがない。


「そうじゃない、出て行け。二度と来るな。」

「へ・・・!?」


私も驚いて、思わず遼平君の顔を見る。



「なんで、いや、俺何もっ」

「どうでもいいよ。
ただ俺は、
 ここに他人を入れたくない。」


それ以上言わせないという風に、
遼平君はとても静かに遮った。


声を荒げるでもなく、ごく自然に、
当たり前の事を口にするように静かに。


彼の言葉に、私の方が打ちのめされた。


穏やかな口調とは裏腹に、
言葉は絶対的な拒絶を指し示している。


「他人って、いや他人だけど・・・」

お友達は尚も言いつのろうとしたけれど、

遼平君の冷ややかな目に口を閉ざすと、
あきらめたようにのろのろと玄関に向かう。


バタンとドアの閉まる音がしても、

私は下を向いたまま
振り向く事もできなかった。


顔を上げるのが怖い。

つかまれた手が、震えそうで怖い。



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