片恋
「・・・大丈夫?琴子ちゃん。
何もされてない?」
遼平君は私の手を離すと、
かがみこんで
そっと私の頬に触れる。
ぴく、と身構えそうになるのを
なんとか堪えた。
「話してた、だけなのに・・・。」
「そう?邪魔したかな。」
いかにも口先だけの、意味のない言葉。
「そうじゃなくて、
・・・友達でしょう?
いいの?こんなことくらいで・・・。」
こんなこと?と、遼平君が軽く首を傾げる。
彼にしては
どこかあどけないその仕草に、
なぜか私は背筋が寒くなる。
「もともと、たいした友達でもないよ。
それに、こんなこと、で済む話でもない。」
そういって遼平君は私の目を覗き込む。
沼のように凪いだ眼の奥で、
とろりと深い、底が蠢く。