片恋


うつむきそうになるのをこらえ、
やっとの思いで遼平君の目を見つめては、

見ていられずに逸らして、
言いあぐねる。


「・・・私が、好きなのは」

好きなのは、


ぎゅっと一度、目をつぶり
決心して顔を上げ…た。



「―――・・・」



遼平君は、無表情で、こちらを見ていた。


どんな想いも
言葉も

寄せつけない、


なにも映し出さない、


無表情。



「どうしたの?琴子ちゃん。」


にっこり笑って
ちいさな子をなだめるように、
私の頭をやさしく撫でる。


とても使い慣れた、いつもの笑顔。


「・・・なんでも、ない、よ。」


言いながら下を向いてしまい、
鼻がつんとして、涙がにじむ。


慌てて顔を上げて笑おうとして、


息を呑んだ。




まっさかさまに墜落しそうな、

黒。





足元が心もとなくなるような

闇。




遼平君の、こころそのもの。



こちらを見つめるその瞳の中を、

私は、我を忘れて見つめ返す。



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