片恋
「ここに置くから、気をつけてね。」
机の端に紅茶を入れたカップを置いて
背後から覗き込むと、
画面はまだ起動したままの状態だった。
「なんだ、とっくに観始めてるのかと思った。」
見ると、琴子はぼんやりとしたまま
ただ画面を見つめている。
そういえば、いつのまにか
お喋りが止んでいた。
「・・・琴子ちゃん?」
声をかけると、ハッとしたように
続きを話し始める。
「あ、そう、それでね亮介が、
みき先生に・・・」
「亮介がどうかした?」
穏やかに言ったつもりだったが
言葉はハッキリとして響き、
琴子は弾かれた様に、顔を上げた。
それから誤魔化すように笑って、
無理に言葉を繋げる。
「・・・あ、そう、だから、
みき先生のこと好きなくせに・・・」
・・・どこまで、
意地を張るんだろうな。
思ってから、気がついて
すぐにそれを軽い溜息に紛らわせ、
ふっと余計な力を抜いた。
「子供の頃の亮介の話を聞いても、
しょうがないしなあ。(笑)」
からかうように軽く言うと、
琴子が慌てて必死に謝る。
「えっ、そっか、ごめんねっ、
そうだよねっ、じゃ、えっと・・・、」