片恋


あたふたと考えをめぐらせる琴子を
面白がって眺めていると、

琴子が、そーーっとうかがうように
こちらを見上げた。

それから少しためらって、口を開く。


「えっと、・・・じゃあ、

 シュウ君の話する?」

今度こそ吹きだしそうになり、
笑いを噛み殺しながら

「・・・しない。」と首を横に振った。


琴子は本当に困ったというように、
おろおろと意味もなく辺りを見回す。

「え、そっか、どうしよう・・・
どうしようかな・・・。」


なんだか無理に聞き出すのも
可哀想に思えてきて、

適当にマウスを
かちゃかちゃといじっては、
次々とウインドウを開く琴子の後ろに
腰を下ろし、貸して、と声をかけながら
マウスに手を乗せた。


びくっと、琴子の肩が震える。


「―――・・・。」


不自然に黙り込んだ琴子が
すばやく手を引き、うつむいた。

せわしなく動く瞳は痛々しいほど緊張し、
見るまに落ち着きを失くしていく。


「ご、ごめん、お茶もらうねっ」

琴子はぎこちなく立ち上がると
机を挟んだ向かい側に行き、
震える手でカップを持ち上げた。

そして取り落とす。

フローリングにサアッと紅茶が広がり、
同じ早さで琴子が顔色を失う。

「ご、ごめんなさいっ」

ほとんど、パニックを起こしてるようだった。

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