片恋
「あれー、遼平じゃーん」
近くにあった
ファーストフード店に入り
琴子を二階の席にやって
レジの方へ向かうと、
学生のグループに声をかけられた。
大学の友人達だった。
誰にともなく、
片手を上げて答える。
「ひとりー?
これから飲み会だけど、来る?」
「ていうか来てよ~。
お前いると、違うし。
あ、あいつもいるけど。」
「遼平、いまだにあいつと
口きいてないって、ホント?」
「そーそー、
遼平をアテにしてたから、
テスト落とすかもしんねーとかボヤいてた。」
「うは、あいつも馬鹿だけどさ、
お前も意外と子供っぽいな、遼平~~」
口々に問いかける声は騒音に紛れて、
聞こえているのに
気をつけていないと聞き逃しそうになる。
「そう、ゼッコウ。(笑)」
小学生か、お前はー!!
店内の喧騒を打ち消す大声に、
数人がちらりと振り返った。
子供が騒ぎながら
足元を駆け抜け、
視界の端で転んで泣き出した。
店員が商品を載せた
トレイを掲げ、
声を張り上げながら注文客を探して歩き、
順番待ちのレジでは、
待たされた客が文句を並べている。
「ところで遼平~、
この前のコ、あれからどした?」
「誰だよ。(笑)」
うーわー、誰?って!!
こえぇーなあ!!
些細なことで、はじけたように一斉に笑う。
飲み会はこれからだと言ったが、
すでに全員、酔いが回っているらしい。