片恋
5章
「ごめんなさい・・・っ」
何度も人に
ぶつかりそうになって謝りながら、
だけどそれを
かきわけるようにして走った。
色とりどりの電飾がめいめい明滅して、
不規則に道行く人を照らす。
さっき一瞬だけ見えた亮介の服の色も、
すでに忘れてしまいそうだった。
遼平君を待ちながら
店の二階の窓から通りを見下ろしていて、
友達と騒いで歩いている亮介を見つけた。
そのまま急いで席を離れ、
遼平君に声をかける事もせずに
店の外に飛び出してきてしまった。
だから早く亮介をつかまえて、
戻らなくちゃ。
『さがしたよ。かえるよ、りょうすけ』
そう言って
ふくれっつらした亮介の手を、
ちょっと強引に
引っ張って行けばいい。
それからゆっくり謝って、
・・・大丈夫、昔と同じでいいんだ。
引き返そうかと迷いそうになる
自分に言い聞かせ、
人と人の隙間からのぞいた亮介のシャツを、
手を伸ばしてつかんだ。
「は?」
思いっきり不機嫌に振り返った亮介が、
私に気がついて驚く。