片恋


「あっそ。」


吐き捨てるような口調だった。

私は顔を上げる事ができずに
凍りついたように目を見開いて、

ただ足元のアスファルトを見つめる。


ザーッと、川音に似た
耳鳴りが聞こえた。

にじんで歪む視界の中で、
亮介が無言で踵を返して歩き出す。

私は慌てて顔を上げると、
後姿に手を伸ばした。

「ま、まって、
もう迎えに来ないよ・・・っ、いいの!?」

掴もうとした指先を簡単にすり抜けて、

亮介の背中は
私の声が聞こえてないかのように、

こちらを見ようともせず遠ざかる。


「亮介・・・っ」


―――もう私がいなくても、いいの?



私は、引きとめようと口を開くけれど、

どうしても、なにも出てこなかった。


立ち尽くしてるうちに人の波にのまれて、
自分がどこにいるのかわからなくなる。

今になって、気付いた。


会わなくなって
そんなに経ってないはずなのに、

亮介の目線は
前より少し、高くなっていた。



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