片恋




ちいさい頃、亮介に泣かされては、

遼平君の姿を探して泣きついていた。




うぅーーっと、
子供みたいに泣きじゃくる私に

どうしてか
ためらうようにして、

遼平君はそっと、私の頭をなでる。


「どうしたの?何があった?」

しゃくりあげるだけで
答えられずにいると、

遼平君は少し体を離して、
かがみ込んで私に目線を合わせる。


「それともどこか痛い?」

ぶんぶんと首を振ると、
遼平君はちょっとだけ笑う。


「・・・りょ、すけに、会った。」

「そう。それで?」


それだけ、と
口をつぐんで尖らせると、

遼平君は困ったような顔で笑う。


亮介の苦笑と、よく似ていると思った。


「私のこと、怒ってないって。

だから、謝らせて、くれなかった。

みつけても、意味なかった。」


「そっか。」


いたわるような優しいまなざしに、

私は余計、泣きたくなる。


めちゃくちゃに
すがりついて、

遼平君を困らせて、

泣き喚いてしまいたい。


私がくたくたに泣き疲れて

涙を忘れて眠ってしまうまで、

たくさんたくさん甘やかして欲しい。



だけどそれは、とても恥ずかしい事だ。


だからもう、
彼のやさしさを見なくても済むように、


私は遼平君の胸に、顔を押し付けた。



「もうしらない。」

「え?」



「亮介なんか、もうしらない」



私の頭の上で、
遼平君が、かすかに戸惑う。



「亮介がいなくなったって、
私は別に、へいきなんだ。

だって」



だって、


私がすきなのは



遼平君だから。

< 80 / 185 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop