片恋

「高校の頃は
いつも忙しくして、
時間がなくて、意味もなく疲れてた。

・・・全部うまくやろうと
してたのかもしれないけど。」

「うーん、それもそうか。
めっちゃくちゃ多忙だったもんね。

かまってもらえなかったかも。

勉強に部活に、生徒会・・・というか

『長』のつくものなんでもやってたよね。」


「そんなことないと思うけど(笑)」

見てきたように言うのがおかしくて、

それから小学生だった頃の琴子を思い出して、


少し笑った。



「・・・いられたらなあって、
目の前で、分数の割り算に悩まされてたの、誰だっけ?」


「ん?私が小6の時に、
家庭教師してもらってた事?」

「そう。」

それはそうなんだけどー、と

カップを置いて
小さなつめで突つきながら、

琴子が言葉を探すように考え込む。


「その時の私じゃ、あまり意味がなくて。

今の私が、高校生の遼平君の傍に、いられたらなって。」


でもそれは、
今の遼平君くらいの年になった私も、

また同じ事を思うのかなあ。


もしかしてずっと、そう思うのかなあ。



「・・・やっぱ、もどかしい。」


頬杖をついていた手を崩して、

琴子がテーブルにうつ伏せた。


伏せられた長い睫に午後の日差しが当たり、

金色の光を弾き返している。


その様子を見ながら、つい苦笑した。

そんなに、大人に見えるんだろうか。


理解できない、と悩ませる程に。


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