片恋
「別に、難しい事は考えてないけどなあ。
4年後まで待たなくたって、今にわかるよ。
何も考えてないんだなって(笑)」
「そうなの?」
そうだよ、と笑い返す。
「何も考えずに物事をこなす事なら、
これまでにだいぶ、慣らされてきてるから(笑)」
「・・・ふうん?
でも、じゃあ最初は
・・・違ったの?」
どことなく大人びて聞こえるのは、
顔を伏せたまま呟いているからだろうか。
「最初、が、いつだか、
もう覚えてないけど。(笑)
最初に周りを固めて、形作っちゃえば
あとは維持するだけだから。
手を抜いたって、気づかれないよ。
誰も見てないんだから。」
「・・・手、を抜いたんだ。」
「そう。絵だの作文だの、
点数が曖昧なのは特に、
ほんとにいい加減に仕上げてたな。
どこまでそれでいけるんだろうって知りたくて、
段々エスカレートして。
自分でもやりすぎたなってくらい、
ヒドイ絵を描いた事がある。」
「それで?怒られた?びっくりされた?」
「誉められた。(笑)
多分、今でも小学校に飾ってあるよ。」
ふうんと溜息をつくように
琴子が呟いた。
「・・・みんなに注目されていながら、
誰の目にも映らない。
・・・これじゃ、ミステリーだ。」
なにそれ、クリスティか何か?と笑うと、
琴子は頭をテーブルに乗せたまま、
目だけでちらりとこちらを見た。
それからまたすぐに、
視線をテーブルの上に戻す。
「・・・やっぱり、私と同い年の、
遼平君の傍にいられたら、よかったのにな。」