片恋
人通りの多い交差点を渡って、
通り沿いの
たくさんのお店や
行きかう人に
キョロキョロしながら歩いていくと、
何度か来た事がある道に出た。
この道なら私にもわかるぞ、
でも駅じゃなくて美術館に向かっちゃうぞ、
とか思っていると、
大きなビルの前の広場のような所で、
遼平君は不意に立ち止まった。
広場といっても
時計台とベンチや植え込みが
いくつかあるだけの小さなスペースで、
そのビルの買い物客の為に作られた休憩所のようなものだった。
「ちょうど、時間だと思って。」
「?」
待ち合わせ・・・でもないだろうし、
ビルの中じゃなくて、ここに用があるの?と
不思議に思ったとき、
ちょうど17時を知らせる鐘が鳴った。
目の前の時計台から
オルゴールのメロディが流れ、
小さな人形達が文字盤から飛び出してきて
くるくると踊る。
「―――この曲。」
聞こえてきたメロディに、
私は驚いて遼平君の方を見た。
「前に探してた、どっかで聞いた曲ってこれ?」
「そう!そうそう!!そうだ、これかあ!!」
ずっと探してたピースが
ぴたっとはまったスッキリ感に、
思わず興奮して大声をあげる。
「気がつくと頭の中でよく流れてるんだけど、
なんて曲か知らなくて・・・。」
「『ユア・ソング』だね。
これなら中古じゃなくても割とあると思うんだけど・・・。」
そう言うと遼平君は持ってた鞄の中を探り、
四角くたたまれた紙袋を取り出した。
「よかったら、はい。」