片恋


「・・・なんとなく、わかってきた。

遼平君て、意外と世話焼き・・・というか、
構いたがりなんだね。」


二言目には
保護者発言をされて
少し拗ねながらわけしり顔で言うと、

遼平君は片方の眉を持ち上げて、

「この子はまた、なんか言い出したぞ」

という風に、面白がって身構えた。


「へえ。はじめて知った。」


彼が言う通り、
足元を埋め尽くすたくさんの落ちた銀杏の葉を眺めながら、

黄色い並木道を並んで歩く。


「単に今まで、ちょうどいい相手がいなかったんだよ。

だって、シュウ君は手がかからないし、…」


もう一人は、と言おうとして言葉が宙に浮く。


けれどそんなに不自然な間が空くことなく、

遼平君がさり気なく口を開いた。

「そうだね、言われてみれば
琴子ちゃんみたいに手がかかる子を相手にしてると、

俺も生きがいというものを感じるよ。」

妙に真面目くさって、そんなことを言う。

「酷いよそんなあぁ、それはないよーー!!」


ふざけながら遼平君の腕にしがみついて、

動揺を隠しながらそっと思う。


そう言えば、ひとつだけ
変化はあったのだ。


当然といえば当然だけれど、


あの時を境にして、

遼平君も私も、
亮介の名前を口にしなくなった。


それを言ったらきっとシュウ君には、


やっぱり変なの、と
言われちゃう気がするのだけど。

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