片恋
『お乗換えのお客様は
14番線、15番線ホームをご利用ください――』
ガヤガヤとした
たくさんの人の話し声の中で、
注意して聞き取ったアナウンスは
自分に関係のないラインだった。
「うん。平気。合ってる。」
さっき見た電光掲示板を
もう一度振り返って、
自分が向かうホームを確認する。
目を凝らして歩調を緩めたら、
危うく人とぶつかりそうになって
慌てて前を向く。
学校帰りからでも、
何度か遼平君のうちに
遊びに行ってはいるものの、
今だに電車の乗り換えは気が抜けない。
頭の中で唱えながら歩き出そうとして、
視界の中を何かが通り過ぎた。
そのまま足元に、ヒラリと落ちる。
とっさに顔を上げると、
先を急ぐ女の人の後姿。
拾い上げてみると、
ハンカチだった。
「綺麗・・・。」
その手触りに、
懐かしさが
ふわりとよぎる。
なんだっけ、何かに似てる・・・
こんな風にひらひら揺れる
・・・あれは、
おかあさんのスカート。
つかみ所のない
やわらかな感触。
ぼんやりと拾ったハンカチを見つめながらトリップしかけて、
ハッと我に返った。
・・・とか、
懐かしがってる場合じゃない・・・!!
慌ててさっきの女の人の後姿を目で探して、
追いかけて走った。