片恋



その後の事は、
あまり覚えていない。


よくわからないショックを引きずったまま駅の構内を歩き回って、

ほとんど無意識のまま、電車に乗った。



見覚えのあるようなないような

車外の景色に不安になって路線図を見上げると、


頭の重さに耐えられなかったかのように

くらくらと眩暈がした。


不安を掻き立てるだけ掻き立てて、

どきどきと心臓が大きく騒ぐ。


それでも長い時間をかけて、
なんとか自分の乗った電車を確かめると、

緊張を吐き出すように、小さく息をついた。

息が震えるだけで、
余計に心細くなった。



・・・遼平君に、会いたいなあ。



遼平君の、真っ直ぐで迷いのない視線や、

そつのなさが、すごく好きだ。



すっきりと整った無駄のない姿勢や、

安定した存在感そのものが、とても好きだ。


ほとんど懐かしむようにして焦がれながら、
ドアにもたれて窓の外を見つめる。


それから、ハッとして体を起こした。


「・・・うそっ、通り過ぎちゃった・・・っ」


降りるつもりだった駅を
電車は止まる素振りも見せずに、悠々と素通りしていく。

真っ青になって、どうしようどうしようと
窓ガラスに張り付く私の目の前で、

無情にも景色はびゅんびゅん流れていく。


うわーん、今すぐ降りたいよーーっっ


時々すれ違う反対向きの電車が、
まぶしいくらいに、輝いて見えた。
< 97 / 185 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop