片恋
その後の事は、
あまり覚えていない。
よくわからないショックを引きずったまま駅の構内を歩き回って、
ほとんど無意識のまま、電車に乗った。
見覚えのあるようなないような
車外の景色に不安になって路線図を見上げると、
頭の重さに耐えられなかったかのように
くらくらと眩暈がした。
不安を掻き立てるだけ掻き立てて、
どきどきと心臓が大きく騒ぐ。
それでも長い時間をかけて、
なんとか自分の乗った電車を確かめると、
緊張を吐き出すように、小さく息をついた。
息が震えるだけで、
余計に心細くなった。
・・・遼平君に、会いたいなあ。
遼平君の、真っ直ぐで迷いのない視線や、
そつのなさが、すごく好きだ。
すっきりと整った無駄のない姿勢や、
安定した存在感そのものが、とても好きだ。
ほとんど懐かしむようにして焦がれながら、
ドアにもたれて窓の外を見つめる。
それから、ハッとして体を起こした。
「・・・うそっ、通り過ぎちゃった・・・っ」
降りるつもりだった駅を
電車は止まる素振りも見せずに、悠々と素通りしていく。
真っ青になって、どうしようどうしようと
窓ガラスに張り付く私の目の前で、
無情にも景色はびゅんびゅん流れていく。
うわーん、今すぐ降りたいよーーっっ
時々すれ違う反対向きの電車が、
まぶしいくらいに、輝いて見えた。